仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(う)93号 判決
(一)記録によると、昭和二十七年十一月十一日附起訴状の次に竹内ツヤに対する検察官真鍋薫作成の昭和二十七年十一月十日附供述調書が添附されており、右供述調書が同年十一月十三日原審に提出され、その第六項に所論のような供述記載のあることは所論のとおりであるが右は被告人の妻竹内ツヤが被告人の自宅におらないことを供述しているに過ぎないのであつて、右供述調書が所論のように裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類とは認めることができない。
原審検察官が右起訴状謄本の送達不能に帰したことの通知を受けたのは昭和二十七月十一月二十六日午後二時三十分であることは所論のとおりであるからその証明資料はその後でも事足りたのであるとの所論も一理ないわけではないが、検察官は被告人に対する時効の進行を停止する目的もあつて。起訴したのであり、刑事訴訟規則第百六十六条の規定は起訴状謄本の送達手続を採る以前における証明資料の提出を禁じたのではなく、検察官は同条により公訴提起後速やかに証明資料を裁判所に差し出さなければならないのであるから、あらかじめ起訴状謄本の送達不能が判明している場合にはその送達手続をなす以前においても証明資料を提出し得るものと解すべきである。
同第三点について。
裁判官大島三佐雄が原判決をなし、しかも同裁判官が起訴前証人工藤賢治及び高杉清一郎の尋問をなして、これら尋問調書が原判決の証拠として引用されていることは所論のとおりである。しかし裁判官が起訴前刑事訴訟法第二百二十七条により被告人に関係する事項について証人を尋問したとしても直ちに被告人に対する事件について予断を抱くとは限らず、その同一裁判官が審理判決しても除斥原因とはならず、回避すべきことが要請されているものでもない。したがつて起訴前被告人に関係する事項について証人を尋問した裁判官がその後被告人を審理判決しても不当ではなく、憲法第三十七条第一項の規定に違反するとは解せられない。そして、記録によれば被告人及び原審弁護人は右二通の供述調書を証拠とすることに同意しているのであるから原審がこれを証拠としたことについて違法の点はない。